
「CPAPを使っているのにいびきが改善しない」
「家族からいびきが治らないと指摘された」
と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
もし、あなたが今このような悩みを抱えていても決して珍しいことではありません。
CPAP療法は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療に非常に効果的な方法ですが、時に「いびきが治らない」と感じる場合があります。
そこで本記事では、CPAPの改善効果が発揮されない原因や対処法について詳しく解説していきます。
改善しない原因を特定し適切に対処すれば、多くの場合改善が期待できるため、ぜひ最後までご覧ください。
CPAP療法がいびき・SASに効果的である理由
始めに、CPAP療法がいびきや睡眠時無呼吸症候群(以下SASと略)に効果があると言われる理由を解説します。
CPAP療法はSASの根本原因である気道の閉塞を防ぎ、いびきに対して改善効果が期待できる治療法です。(1)
治療法としても推奨度も高く、医学的にも改善効果に対する効果が証明されています。(1)
CPAP療法は、マスクから送り込まれる空気の圧力(陽圧)が気道を内側から支え、常に開いた状態を保ち、気道の閉塞に直接アプローチするものです。
そのため、CPAP療法にていびきが治らないと感じる場合、何らかの原因でCPAPの効果が十分に得られていない可能性が考えられます。
CPAPで改善効果でない理由① エア漏れ
CPAP療法中にも関わらず、いびきが残存する場合、疑うべき原因の一つが、マスクの不適合による「エア漏れ」です。
では、どのような場合にエア漏れは起こりやすいのか解説していきます。
マスクのサイズ・種類が顔に合っていない
ご自身の顔の形や大きさ、鼻の高さ、口呼吸の有無などに合ったマスクを選べていないと、フィット感が悪く、エア漏れが生じやすくなります。
例えば、マスクが大きすぎると顔との間に隙間ができやすく、小さすぎると圧迫感が強く、かえってズレやすくなる場合があるでしょう。
また、普段口を開けて寝る癖がある方がネーザルマスクを使用すると、口から大量のエアが漏れてしまいます。
マスクの装着方法が正しくない
適切なマスクを選んでいても、装着方法が間違っていたり、ヘッドギア(ストラップ)の締め付け具合が不適切だったりすると、エア漏れの原因となります。
ストラップの締め具合によって以下のような状態が考えられます。
- 締め付けが緩い:寝返りなどによるマスクのズレによるエア漏れす
- 締め付けが強い:マスクのクッション部分の変形によるエア漏れ
締め付けが強い場合は、顔への痛みや圧迫痕がつくため、使用後の顔の状態を確認してみてください。
マスクやクッションの劣化・破損
CPAPマスクのクッション部分(顔に直接触れるシリコン製の部分)は消耗品です。
長期間使用していると、シリコンの硬化や皮脂や洗浄剤の影響での劣化、目に見えない小さな亀裂などが生じる可能性があります。
劣化したクッションは顔への密着性が低下し、エア漏れの原因となります。
また、ヘッドギアのゴムが伸びてしまっている場合も、マスクを適切に固定できなくなるでしょう。
マスクや関連部品には推奨される交換時期がありますので、定期的な交換が大切です。
寝返り・体動によるマスクのズレ
うつ伏せで寝る癖がある方は、CPAPのマスクにズレが生じやすいです。
また、睡眠中は誰でも無意識に寝返りを打ちます。
その際に、マスクが顔から浮いてしまったり、チューブに引っ張られてズレてしまったりすると、一時的にエア漏れが起こる場合があります。
CPAPで改善効果でない理由① 圧不足または圧過多
もう一つの重要な原因として、処方されているCPAPの圧力設定が、現在のあなたの状態に最適化されていない可能性が考えられます。
処方圧が低すぎる(圧不足)
治療開始時よりも体重が増加した場合や、飲酒量が増えた、あるいは極度に疲労しているといった状況では、気道の閉塞しやすさが悪化し、以前の圧力設定では気道を十分に広げられなくなっている(圧不足)可能性があります。
圧力が不足していると、睡眠中に気道が部分的に狭窄し、いびきが発生したり、浅い呼吸(低呼吸)が残存したりします。これでは、CPAP治療の効果は十分に得られません。
処方圧が高すぎる(圧過多)
処方されている圧力が現在のあなたにとって高すぎる(圧過多)場合も、問題となる可能性があります。
強すぎる空気の圧力を不快に感じ、無意識のうちに口を開けてしまったり、マスクをずらしてしまったりします。
結果的にエア漏れや口からの空気の逆流を招き、いびきに繋がる可能性があります。
オートCPAP(自動調圧型)のアルゴリズムの問題
CPAP装置には、常に一定の圧力を送り続ける「固定圧型」と、患者さんの呼吸状態に合わせて自動的に圧力を調整する「オートCPAP(APAP)」があります。
オートCPAPは、あなたの呼吸に合わせて、送る空気の圧力を自動で調整してくれる便利な機能です。
基本的には、いびきや無呼吸を防ぐために、常に最適な圧力になるよう設計されています。
しかし、ごく稀に、寝ている間の咳やため息といった、いつもと違う呼吸のパターンが起こると、機械がその変化にうまくついていけなくなることがあるでしょう。
その結果、あなたにとって圧力が強すぎたり、逆に弱すぎたりして、いびきが改善されない、というケースも考えられます。
CPAPで改善効果でない理由③ 鼻閉による口呼吸の影響
アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎(蓄膿症)、鼻中隔弯曲症などによる「鼻閉(鼻づまり)」があると、CPAP使用中でも口呼吸になりやすく、これがいびきの原因となるケースがあります。
口呼吸による改善不良の可能性について解説していきます。
アレルギー性鼻炎や花粉症による鼻粘膜の腫れ
鼻炎や花粉症により、鼻の通りが悪い状態でCPAPを使用すると、鼻からの空気の抵抗が大きいため、圧力が十分に気道に届かない可能性があります。
また、苦しくて無意識に口を開けてしまい、口からエアが漏れてしまう場合もあるでしょう。
副鼻腔炎(蓄膿症)による鼻汁や鼻茸
副鼻腔炎は、鼻の奥にある副鼻腔という空洞に炎症が起こり、膿がたまったり、鼻茸ができたりする病気です。
これにより、慢性的な鼻づまりや鼻水、鼻から粘り気のある鼻水がのどに流れる症状(後鼻漏)などが生じ、鼻呼吸が困難になります。
鼻中隔弯曲症など構造的な問題
左右の鼻の穴を仕切っている壁である鼻中隔が大きく曲がっている「鼻中隔弯曲症」や、鼻の中にポリープができている場合も、物理的に鼻の通り道を狭くし、慢性的な鼻閉を引き起こします。
このような構造的な問題は、薬物治療だけでは改善が難しく、場合によっては外科的処置が必要になります。
風邪や気温変化による一時的な鼻閉
風邪をひいた時や、急な気温の変化により鼻づまりを起こす場合があります。
CPAP使用中にこのような一時的な鼻閉が起こると、普段はいびきをかかない方でも、いびきが出やすくなる可能性があります。
CPAPで改善効果でない理由④ 生活習慣の変化やその他の要因
CPAP治療を開始した後の生活習慣の変化や、他の睡眠関連の問題も、いびきが治らない、あるいは再発する原因として考えられます。
CPAP治療だけに頼るのではなく、ご自身の体調や生活全般の見直しも、治療効果を高める上で非常に重要です。
体重の増加
体重が増加すると、特に首周りの脂肪が増え、気道がより狭窄しやすくなります。
その結果、CPAPの処方圧が相対的に不足し、いびきが再発するケースがあります。
CPAP治療中であっても、体重管理は引き続き重要なポイントです。
アルコール摂取量の増加、寝酒の習慣化
CPAP治療中であっても、アルコールの摂取量が増えたり、寝酒が習慣化したりすると、いびきが出やすくなる可能性があります。
これは飲酒によって喉の筋肉が緩み、気道が狭くなりやすくなるためと考えられます。
寝る前に飲酒する場合は、4時間以上間隔を空けるようにしましょう。
睡眠薬や精神安定剤などの服用
これらの薬剤を服用している場合、喉の筋肉も弛緩しやすくなり、いびきや無呼吸が悪化する可能性があります。
もしCPAP治療中にいびきが気になるようになり、かつこれらの薬剤を服用している場合は、自己判断で中止したりせず、必ず処方医とCPAPの主治医の両方に相談してください。
他の睡眠障害の合併
SAS以外にも、睡眠の質を低下させる様々な睡眠障害が存在します。
例えば、脚の不快感で入眠が妨げられる「むずむず脚症候群(レストレスレッグス症候群)」や、睡眠中に脚がピクピクと動く「周期性四肢運動障害(PLMD)」などがSASに合併しているケースがあります。
これらの他の睡眠障害があると、CPAP治療を行っていても睡眠が浅くなったり、中途覚醒が増えたりし、結果としてCPAPへの耐性が下がり、無意識にマスクを外してしまうなどして、いびきに繋がる可能性があります。
「CPAPでいびきが治らない」と感じた時の対処法
いびきが治らないと感じたときは、「CPAPは効果がない」と諦めたり治療を中断したりするのではなく、主治医への相談と、原因に応じた適切な対処が必要です。
以下に、具体的な対処法について解説します。
主治医に相談
CPAP治療中に気になる、あるいは困っていることがあれば、遠慮せず主治医や医療スタッフに正直に伝えましょう。
睡眠中は無意識の行動が多いため、自分での改善が難しいです。
症状の悪化や治療のモチベーション低下にもつながるため、早めの対応が大切です。
マスクの再フィッティング
エア漏れがいびきの原因として疑われる場合、マスクのフィッティングの見直しが必要です。
改めて顔のサイズを測定してもらい、適切なサイズのマスクを選び直しましょう。
また、現在使用しているマスクのタイプが合わないと感じる場合は、異なるタイプのマスクを試してみるのも有効です。
圧力設定の見直し
圧不足や圧過多が疑われる場合は、医師の判断に基づき、必要であれば睡眠検査を再度行い、適切な圧力に再設定してもらいましょう。
自己判断で装置の設定を変更すると、治療効果を損なうだけでなく、健康上のリスクも伴う可能性があるため、絶対に行わないでください。
鼻疾患の治療
慢性的な鼻づまりがいびきの原因となっている場合は、CPAP治療と並行して、耳鼻咽喉科への受診を検討しましょう。
鼻の通りが良くなると、CPAPの効果が格段に向上し、いびきの軽減も期待できます。
生活習慣の改善
CPAP治療中であっても、体重管理、禁酒・節酒、禁煙、規則正しい睡眠といった生活習慣の改善は、治療効果を高め、いびき軽減のために非常に重要です。
肥満傾向にある方は、3食バランスのとれた食事と適度な運動を心がけてください。
生活習慣の乱れはいびきやSASの悪化だけでなく他の疾患にもつながります。
少しずつでも良いので生活習慣の改善が大切です。
CPAPデータの確認と定期的な受診
CPAP装置の多くは、睡眠中の使用時間、エア漏れの状況、無呼吸・低呼吸の回数などの詳細なデータを記録する機能が備わっています。
定期的な受診で、これらのデータを確認してもらい、治療が適切に行われているか、何か問題が生じていないかの確認が非常に重要です。
まとめ
CPAP療法は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)とその主要な症状であるいびきに対して、有効な標準治療の一つです。
しかし、時に「CPAPを使っているのにいびきが治らない」と感じてしまう場合もあります。
いびきが残存する原因は多岐にわたりますが、一つひとつ丁寧に見直し、適切な対処を行うことによってその多くは改善が可能です。
当クリニックでは、CPAP治療に関するあらゆるご相談に対応し、患者さん一人ひとりに最適な治療を提供できるよう努めております。
どうぞお気軽にご相談ください。
いびき・睡眠時無呼吸症候群外来について
よくある質問
CPAPの圧力を自分で少し上げてみても良いですか?
自己判断での圧力変更は絶対に行わないでください。
不適切な圧力は治療効果を損なうだけでなく、体調不良の原因にもなります。
圧力調整は必ず医師の指示のもと、適切な検査や評価に基づいて行われるべきものです。
まずは主治医にご相談ください。
CPAP治療を始めて数ヶ月経ちますが、まだ日中の眠気が取れません。いびきも少し残っています。
CPAP使用時間が短い、エア漏れが多い、圧力が不適切、または他の睡眠障害(むずむず脚症候群など)や精神的なストレスが影響している可能性も考えられます。
CPAPデータを確認し、総合的に評価する必要があるため、主治医に詳しく相談してください。
CPAP治療中でも、飲酒した日は特にいびきがひどい気がします。なぜですか?
アルコールは喉の筋肉を弛緩させるため、気道が狭くなりやすく、いびきを悪化させます。
CPAPの圧力が普段の状態に合わせて設定されている場合、飲酒による気道のさらなる狭窄に対応しきれず、いびきが出やすくなることがあります。
CPAPの効果を減少させないために、飲酒は寝る前の4時間前までにしましょう。
【参考文献】
福永記念診療所の
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