
いびきは、多くの人が抱える悩みの一つです。
統計的にも「男性の方が女性よりもいびきをかきやすい」というデータがあります。(1)
いびきだけなら良いですが「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」という病気が隠れているケースも少なくありません。
この記事では、なぜ男性がいびきをかきやすいのか、その科学的な理由から日常生活でできる具体的な対処法など幅広く解説していきます。
ご自身のいびきに悩む男性の方も、パートナーのいびきに悩まされている方も、穏やかで質の高い睡眠を取り戻すための手助けになれば幸いです。
そもそも「いびき」とは?メカニズムを簡単解説
いびきは、睡眠中に空気の通り道である「上気道(鼻からのどまでの空気の通路)」が何らかの原因で狭くなり、そこを空気が通過する際に、のどや舌の付け根(舌根)などの粘膜が振動して発生する音です。(2)
健康な状態であれば、睡眠中も上気道は十分に確保され、スムーズに呼吸ができます。
しかし、様々な要因によって上気道が狭くなると、空気抵抗が増し、粘膜が振動しやすくなってしまうのです。
男性の方がいびきをかきやすい5つの理由
ここでは、男性がいびきをかきやすい主な理由を5つに分けて解説します。
喉の形状と気道の広さ
男性は、女性と比較して喉の構造や脂肪のつき方から、睡眠中に気道が狭くなりやすい身体的特徴を持つため、いびきをかきやすい傾向にあります。
男性と女性では、骨格や喉の構造に違いがあります。
一般的に、男性の方が喉仏(甲状軟骨)が大きく、首は太く短いのが特徴です。
気道の断面積自体は男性の方が広いものの、上気道を支える筋肉の構造や脂肪のつき方によって、睡眠中に気道が狭くなりやすいと言われています。
筋肉量の違いと加齢による影響
男性は、睡眠中の筋肉の弛緩や加齢による喉周りの筋力低下の影響を受けやすく、結果として気道が狭まりやすいため、いびきが発生しやすくなります。
全身の筋肉量が多い男性は、一見すると喉の筋肉もしっかりしていて気道を確保しやすいように思えるかもしれません。
しかし、睡眠中は全身の筋肉が弛緩するため、喉周りの筋肉も緩みやすくなります。
若い頃はいびきをかかなかった人でも、年齢を重ねるにつれて喉の筋肉が衰え、気道を支える力が弱まり、いびきをかきやすくなる場合があります。
女性ホルモンの保護作用の欠如
男性は、女性ホルモンのように上気道を開く作用を持つホルモンの恩恵を受けられないため、構造的に気道が狭くなりやすい傾向です。
女性ホルモンの一つである「プロゲステロン」には、上気道を開く筋肉(開大筋)の活動を高める作用が知られています。
構造的に気道が狭くなりやすい状況に加えて、ホルモンによる保護もないため、女性に比べていびきをかきやすい条件が揃っていると言えるのです。
飲酒・喫煙・肥満傾向
男性に多いとされる以下のような生活習慣も、いびきの大きな原因となります。
- 飲酒
- 喫煙
- 肥満
アルコールには筋肉を弛緩させる作用があります。
舌根沈下を引き起こしやすくなり、また、鼻の粘膜を腫れさせ、鼻詰まりを悪化させる場合もあるでしょう。
タバコの煙に含まれる有害物質は、気道の粘膜に慢性的な炎症を引き起こします。
これにより気道が狭くなり、いびきをかきやすくなる傾向です。
男性は内臓脂肪がつきやすく、体重が増加すると首周りや喉の内部にも脂肪が蓄積されます。
この脂肪が気道を物理的に圧迫し、いびきの原因となります。
ストレスや疲労の影響
過度なストレスや慢性的な疲労は、以下が原因でいびきの発生や悪化させる可能性があります。
- 自律神経のバランスの乱れ
- 睡眠の質を低下
- 筋肉の弛緩の促進
十分な休息が取れず、疲労が蓄積した状態では、いびきが悪化する可能性が高まります。
これは、日々の生活でストレスや疲労を感じやすい男性にとって、見過ごせないいびきの原因の一つです。
男性のいびきに潜む「睡眠時無呼吸症候群」のリスク
大きないびきには、「睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)」という重大な病気が隠れている可能性があります。
SASは、睡眠中に呼吸が一時的に止まったり(無呼吸)、浅くなったりする状態(低呼吸)が繰り返し起こる病気です。(3)
SASは男性に圧倒的に多く(女性の2〜3倍とも言われます)、特に中年以降の肥満気味の男性に好発します。
SASは、以下のような合併症を引き起こすリスクを高めます。
- 高血圧
- 心疾患
- 脳卒中
- 糖尿病
- 日中の強い眠気や集中力低下
- うつ病などの精神疾患
もし、あなたやあなたのパートナーのいびきが以下のような特徴を持つ場合、専門医の受診を強くおすすめします。
男性のいびき予防および改善方法
ここでは、今日から実践できる男性向けのいびき対策をご紹介します。
適正体重の維持・減量
肥満はいびきの最大の原因の一つです。
特に首周りの脂肪は気道を直接圧迫します。
BMI(体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m)が25以上の方は、まずは減量に取り組むことが効果的な対策となります。
バランスの取れた食事と適度な運動を心がけ、無理のない範囲で体重をコントロールしましょう。
数キロ体重が減るだけで、いびきの改善が期待できるケースも少なくありません。
禁酒・節酒、禁煙
寝る前のアルコール摂取は、喉の筋肉を弛緩させ、いびきを悪化させます。
喫煙も気道の炎症を引き起こし、いびきの原因となります。
禁煙が望ましいですが、難しい場合は本数を減らす努力から始めましょう。
寝る姿勢の工夫(横向き寝)
仰向けで寝ると、重力で舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道を塞いでいびきをかきやすくなります。
横向きで寝ると、舌根沈下を防ぎ、気道を確保しやすくなります。
抱き枕を利用したり、背中にクッションや丸めたタオルなどを挟んで仰向けになりにくいように工夫すると良いでしょう。
枕の見直し
枕の高さもいびきの予防と改善に効果が期待できるでしょう。
高すぎると顎が引けて気道が圧迫されますし、低すぎると頭が落ち込んで舌根沈下を招きやすくなります。
一般的には、横向きになった時に首の骨が背骨と一直線になる高さが良いとされています。
自分に合った高さの枕を選びが大切です。
オーダーメイド枕や、横向き寝に適した形状の枕なども検討してみる価値があります。
鼻呼吸の意識
口呼吸はいびきの大きな原因です。
意識して鼻呼吸をするように心がけましょう。
鼻づまりがある場合は、鼻うがいで鼻腔を清潔にしたり、アレルギー性鼻炎であれば医師に相談して点鼻薬などの使用もおすすめです。
また、市販の鼻腔拡張テープや口閉じテープ(マウステープ)といった鼻呼吸をサポートするグッズを利用するのも一つの方法です。
これらは鼻呼吸を促す手助けになりますが、効果には個人差があり、根本的な治療にはなりません。
医療機関でのいびき治療
セルフケアを試してもいびきが改善しない場合や、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の疑いが強い場合は、自己判断せずに専門の医療機関を受診しましょう。
受診するなら何科?
いびきやSASの相談は、主に以下の診療科で対応しています。
- 耳鼻咽喉科:いびき、鼻づまりが気になるとき
- 睡眠外来・睡眠センター:精密検査、専門的診断を希望するとき
- 呼吸器内科:無呼吸、日中の強い眠気があるとき
- 内科、または総合診療科:近くに専門科がないとき
まずはかかりつけ医に相談し、適切な専門医を紹介してもらうのも良いでしょう。
医療機関で行われる検査
医療機関では、まず詳しい問診(いびきの状況、日中の眠気、既往歴、生活習慣など)が行われます。
いびきや睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断において重要な検査は「終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)」です。
この検査は、睡眠中の脳波、呼吸状態、血中酸素飽和度、心電図、筋電図、眼球運動など、多くの生体情報を同時に記録し、睡眠の質や量、無呼吸・低呼吸の有無や程度、種類などを詳細に評価します。
従来、精密検査であるPSG検査は病院に1泊入院して行うのが一般的でしたが、近年では技術の進歩により、ご自宅でリラックスした環境で精密検査を受けることが可能になっています。
当クリニック(福永記念診療所 いびき・睡眠時無呼吸症候群外来)での検査方法と流れは以下の通りです。
1 問診・診察
2 検査のお申し込み
3 検査会社との日時打ち合わせ
4 検査機器のご自宅へのお届け
5 検査実施・就寝
6 翌日、機器回収と自動解析
7 後日、当クリニックにて結果説明
在宅での終夜睡眠ポリグラフ検査(フルPSG)のメリット
- 自宅で普段通りリラックスして検査を受けられる
- 入院が不要なため、経済的な負担を軽減できる
- 検査機器の準備が整い次第、速やかに検査を実施できる
- 万が一、検査時にセンサーが外れるなどの不具合があった場合は、追加の費用負担なく再検査が可能です。
詳細な内容や条件についてはお気軽にお問い合わせください。
主な治療法
検査結果に基づき、いびきの原因やSASの重症度に応じて、以下のような治療法が選択されます。
- CPAP(シーパップ)療法
- マウスピース(スリープスプリント)
- 外科手術
CPAP療法は、中等症~重症のSASに対する標準的で効果的な治療法の一つです。(3)
寝ている間に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道が塞がるのを防ぎます。
健康保険が適用されます。
マウスピースは、軽症~中等症のSASや、いびき症の方に用いられます。
歯科で作製した専用のマウスピースを睡眠中に装着し、下顎を前方に移動させて気道を広げる効果が期待できるものです。
SASと診断されれば保険適用となる場合があります。
外科手術は、扁桃肥大やアデノイド、鼻中隔弯曲症など、気道を狭くしている物理的な原因が明確な場合に検討されるケースがあります。
まとめ
男性の方がいびきをかきやすいのには、身体構造の違いやホルモンの影響、そして生活習慣など、様々な理由があります。
しかし、「男性だから仕方ない」と諦める必要はありません。
いびきの原因を正しく理解し、適切な対策を講じれば、その多くは改善する可能性があります。
当クリニックのいびき・睡眠時無呼吸症候群外来では、いびきで悩む方のお悩みに専門医が対応しております。
ぜひ、お気軽にお問い合わせください。
いびき・睡眠時無呼吸症候群外来について
よくある質問
いびきがうるさいと家族に言われますが、自分では全く気づきません。どうすれば自覚できますか?
いびきは無意識下で起こるため自覚しにくいものです。家族にいびきの音を録音してもらう、または睡眠記録アプリのいびき録音機能などを活用すると、ご自身のいびきの状態を客観的に把握でき、対策への意識も高まります。
寝酒をするとよく眠れる気がするのですが、いびきには良くないのですか?
寝酒はアルコールの筋弛緩作用で喉の筋肉が緩み、舌が落ち込みやすくなるため、いびきを悪化させます。また睡眠の質も低下させます。いびき対策としてはもちろん、健康のためにも寝る直前の飲酒は避け、適量を心がけましょう。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査は大変そうで不安です。どんな検査をするのですか?
SASの検査には、ご自宅でセンサーを装着して行う簡易検査や、より詳細な終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)があります。当クリニックでは入院不要でご自宅でPSG検査が可能です。当クリニックでは入院不要でご自宅でPSG検査が可能です。リラックスした環境で普段通りお休みいただく検査ですが、ご不安な点があればお気軽に医師にご相談ください。
【参考文献】
(1)睡眠時無呼吸症候群て何? 芳川 洋
(2)国立病院機構福岡病院 睡眠時無呼吸症候群
(3)日本呼吸器学会. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020.
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