
「いびきってダイエットでほんとに治る?」
「睡眠時無呼吸症候群は、体重が減れば治るの?」
など疑問に思っている方もいるのではないでしょうか?
睡眠中に呼吸が止まる「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」は、いびきや日中の強い眠気だけでなく、高血圧や心疾患の原因にもなるといわれています。
特に、肥満はSASの大きな要因のひとつであり、「ダイエットで治るのでは?」と考える方も少なくありません。
そこで本記事では、SASと体重の関係、ダイエットによる改善の可能性、そして治らない場合の対処法について、医師が詳しく解説します。
最後まで読んで、無呼吸症候群への理解を深め、より快適な眠りを取り戻す参考にしていただければ幸いです。
ダイエットで無呼吸症候群は治るのか?
肥満がSASの要因の一つであるため、「痩せれば治るのでは」と考える方も多いでしょう。
ここでは、ダイエットによる改善の可能性と限界を解説します。
体重減少によって改善が期待できるケース
肥満体型の場合、体重減少によって、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状に改善効果が期待できます。(1)
特に肥満が主原因である患者さんにとって、ダイエットは最も効果的で根本的な治療法の一つとして期待できます。
これは、体重が減ると気道を圧迫していた首周りや喉の脂肪が減少し、気道が物理的に広がりやすくなるためです。
ただし、急激な食事制限は筋力低下やリバウンドの原因になる場合もあるため、医師や管理栄養士の指導のもと、無理のない減量を続けるのがおすすめです。
改善効果が少ない場合もある理由
ダイエットによって睡眠時無呼吸症候群(SAS)に対する改善効果が少ないケースも存在します。
体重が減少しても、他の原因が残る場合、改善効果があまり感じられないケースがあります。
その理由は、SASが「体重」だけでなく、骨格や筋肉、神経の働きなど複数の要因から成り立つ病気だからです。
たとえば、下あごが小さい・鼻づまりがある・加齢による筋力低下などが残る場合、体重を減らしても気道が狭いままで、無呼吸が続く場合があります。
また、いったん症状が改善しても、体重が戻ると再発するケースも少なくありません。
つまり、ダイエットはSAS改善の有効な手段ではありますが、「根治」を保証するものではないのです。
症状の程度や体質によって最適な治療法は異なるため、「体重を減らしても改善しない」「いびきや眠気が残る」という場合は、医療機関での検査をおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群と肥満の関係
肥満は睡眠時無呼吸症候群(SAS)の発症や悪化に深く関わるといわれています。
ここでは、そのメカニズムと肥満以外の原因について解説します。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)が肥満と関係する理由
肥満は睡眠時無呼吸症候群(SAS)になるリスクを高め、症状を進行させる主要な原因とされています。
体が太ると、首周りだけでなく、舌や喉の奥にも脂肪がつくため、空気の通り道である「気道」が狭くなってしまいます。
特に、寝ている間は喉の筋肉がリラックスして緩むため、脂肪で重くなった舌や喉の組織が気道を塞ぎやすくなり、息が止まりやすくなる傾向です。
さらに、お腹に脂肪がたくさんついていると、呼吸に関わる「横隔膜」という筋肉が圧迫され、呼吸が浅くなることもあります。
研究でも明らかにされている事実
アメリカで行われた研究では、体重が10%増えると、1時間あたりの無呼吸や低呼吸の回数(AHIという数値で表されます)が約30%も増えることが示されました。
AHIとは、眠っている間にどれだけ呼吸が止まったり浅くなったりしたかを示す数字で、この数字が高いほど症状が重いことを意味します。
この結果から、肥満がSASの症状を悪化させる大きな原因であることがわかっています。はっきりと分かります。
参考:Obesity and Obstructive Sleep Apnea(Schwartzら, Sleep, 2008)
肥満以外の原因
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、肥満の人だけに起こるわけではありません。
体格が細い人でも、次のような要因で発症する場合があります。
| 原因 | 説明 |
|---|---|
| 骨格の特徴 | 下顎が小さい、または後方に引っ込んでいるタイプでは、舌が後ろに下がりやすく、気道が狭い傾向がある。 |
| 鼻の通りの悪さ | 鼻詰まりやアレルギー性鼻炎などで鼻呼吸がしにくいと口呼吸が増え、舌や軟口蓋が気道を塞ぎやすくなる。 |
| 加齢による筋力低下 | 年齢を重ねると、口まわりや気道の筋力が弱まり、睡眠中に気道が狭くなりやすくなる。 |
| 飲酒・睡眠薬の影響 | アルコールや睡眠薬は筋肉をゆるめ、気道の閉塞を助長する傾向がある。 |
睡眠時無呼吸症候群の原因については、自己判断が難しい可能性があるため、「痩せているから大丈夫」と思わず、症状が続く場合は医療機関での検査をご検討ください。
ダイエットで改善するためのポイント
ダイエットによるSAS改善を目指すには、「やみくもに痩せる」よりも、体への負担を抑えながら継続できる方法が大切です。
ここでは、改善のためのポイントを3つ紹介します。
無理のないペース&継続が大切
急激な減量はリバウンドの原因となるため、無理のないペースで適正体重を目指しましょう。
肥満症の減量目標は3〜6ヶ月で体重の3%とされており、計画的な継続がポイントです。(2)
栄養バランスを保ちながら、ウォーキングや軽い筋トレなどの運動を併用すると、リバウンドしにくい体づくりができます。
食事と運動の工夫をする
ダイエットと睡眠の質向上には工夫が必要です。
食事は「糖質・脂質控えめ、タンパク質と野菜中心」を意識し、就寝3時間前までに済ませて、寝る直前の満腹状態を避けることが大切です。
飲酒も喉の筋肉を緩め、無呼吸を悪化させるため、就寝直前の飲酒はできるだけ避けましょう。
運動は有酸素運動と筋力トレーニングをバランス良く取り入れましょう。
さらに「あいうべ体操」も舌や口周りの筋肉を鍛え、呼吸改善に役立つと期待できます。(3)
おすすめの運動
ダイエットは継続が何より大事です。
過度な運動やダイエットは、継続が難しいだけでなく、リバウンドしやすい特徴があります。
日常的に歩いたり、階段を使ったり、ストレッチをするなどの癖をつけてください。
以下のおすすめの運動を参考に、ダイエットに取り組んでみてください。
| おすすめの運動 | おすすめの頻度 | |
|---|---|---|
| 有酸素運動 ※この中からできるものを選びましょう。 | ジョギング | 1日10分~20分程度 2日に1回程度 |
| ランニング | ||
| 縄跳び | 1分×3セット 3日に1回程度 | |
| 筋肉トレーニング | スクワット | 30秒×3セット 3日に1回程度 できれば日替わりで行うのがおすすめ。 |
| 腹筋ローラー | ||
| 腕立て伏せ | ||
医療的根拠があるわけではありませんが、運動不足の方であればダイエット効果が期待できるため、参考にしてください。
睡眠時無呼吸症候群の症状があるときは医療機関へ
ダイエットで症状が軽くなる方もいますが、すべての人が改善するわけではありません。
症状が続く場合は、医療的な治療を検討しましょう。
医師に相談するメリット
専門医に相談すると、SASの正確な重症度を把握し、ダイエットでは対処できない合併症の予防や治療を包括的に行えます。
医師は、患者さんの状態に合わせて減量療法のほか、CPAP治療や軽症者向けのマウスピース治療、扁桃腺肥大などに対する外科的手術といった、複数の選択肢の中から最適な治療法を提案できます。
さらに、SASに合併しやすい高血圧や糖尿病の管理も並行して行えるという利点も見逃せません。
医師の指導を受けてSASの根本原因にアプローチし、全身の健康を守る最も確実な道筋を立てられるのが、医療機関を受診する大きなメリットです。
CPAP(シーパップ)療法とは
睡眠時無呼吸症候群(SAS)において、CPAP(シーパップ)療法は標準的な治療法として広く採用されています。
CPAP療法は、寝るときに専用のマスクを装着し、鼻から気道へ圧力をかけた空気を送り込み、睡眠中に喉の奥が塞がらないよう気道を強制的に広げた状態に保つものです。
CPAPの使用により、その夜から睡眠の質が改善し、日中の強い眠気や疲労感が軽減されると期待できます。
また、高血圧や心臓病などの合併症リスクを減らす効果も医学的に確立されている治療です。(1)
気になる症状がある方は当クリニックへ
ダイエットや生活習慣の改善を試みても、いびきや日中の眠気が続く方は、当クリニックの睡眠時無呼吸症候群外来へお気軽にご相談ください。
SASを放置すると、知らず知らずのうちに心臓や血管に大きな負担をかけ、重篤な合併症のリスクを高め続けるため、早急に専門的な介入が必要です。
当クリニックでは、精密検査に基づき、患者様お一人おひとりのSASの原因(肥満、骨格、合併症など)を詳細に評価し、CPAPによる治療をご提案しています。
なかなか改善しないと諦める前に、まずはご相談いただき、確かな診断と治療をお勧めします。
まとめ
睡眠時無呼吸症候群は、肥満など様々な原因により気道が狭くなり、睡眠中に呼吸が止まる疾患の一つです。
大切なのは、無理のないダイエット、生活習慣の見直し、そして自分の状態の正しい把握です。
体重を減らすと症状が軽くなる方もいる一方で、骨格や筋力など、体重以外の要因が関係している場合は、改善傾向がみられない方もいます。
「いびきが続く」「眠っても疲れが取れない」と感じたら、放置せず医療機関に相談してみてください。
早めの受診が、睡眠時無呼吸症候群の改善や今後の病気のリスクを予防する効果が期待できます。
いびき・睡眠時無呼吸症候群外来について
よくある質問
どのような症状があれば、医療機関を受診すべきでしょうか
「いびきがひどい」「睡眠中に呼吸が止まっていると指摘された」「日中の強い眠気がある」「朝起きた時に頭痛がする」といった症状が続く場合は、睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
放置すると高血圧や心疾患などのリスクを高めるため、早めに専門医の診察を受けることをおすすめします。
睡眠時無呼吸症候群の治療費は、保険は適用されますか?
睡眠時無呼吸症候群の検査や治療は、健康保険が適用されます。
CPAP療法は、医師の診断と処方があれば保険診療となり、月々のレンタル費用や診察費用がかかります。
費用は医療機関や治療内容によって異なりますので、具体的な費用については、受診予定の医療機関にお問い合わせください。
CPAP療法を始めたら、ダイエットはしなくても良いのでしょうか?
CPAP療法は症状を一時的に改善させる対症療法であり、根本的な原因(肥満など)を解消するものではありません。
CPAP治療と並行してダイエットや生活習慣の改善に取り組むことが、より効果的で長期的な健康維持につながります。
【参考文献】
(1)日本呼吸器学会. 睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診療ガイドライン2020.
(2)第5章 肥満症の治療と管理
(3)一般財団法人運輸・交通SAS 対策支援センター
舌と睡眠の深い関係 〜睡眠時無呼吸症候群とのつながり〜
福永記念診療所の
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